ゴールキーパーが教えてくれたチームマネジメント
私は学生時代、サッカー部に所属していました。日が暮れるまで毎日全力で取り組んでいたサッカーと青春の日々。
ポジションはゴールキーパー。ゴールキーパーというポジションを通じて、私はたくさんの事を学びました。ゴールキーパーには組織をマネジメントするヒントがたくさん散りばめられており、現在でもその考え方は大いに役に立っています。「コミュニケーション」「チームビルディング」「メンタルマネジメント」…。
チームとして勝利を目指す事と組織として目標を達成する事。多くの共通点があります。ゴールキーパーとしての考え方を通じてマネジメントを学び、チームを成功に導きましょう。
1.管理職とゴールキーパーの共通点
ゴールキーパーは、チームに一人しかいません。一人だけ違うユニフォームを着用し、一人だけ手を使うことができます。
最後尾に位置し、全体を見ながら試合をコントロールする、という部分では、管理職(マネージャー)と一致します。チームには監督もいますが、監督は試合に出ることができず実際にプレイできないため、管理職(マネージャー)というよりは経営陣に近いものがあるのかもしれません。
(1)責任が大きい
サッカーは点を取り合うスポーツです。野球よりも点が入りにくいスポーツであり、1点の重さは他のスポーツと比較し重いものがあります。つまり、失点が直接勝敗に大きく影響してしまうのです。
ゴールキーパーが点を許してしまうということは敗北に近づいてしまうという事。これは、仕事における管理職(マネージャー)の責任感と共通するものがあります。
ゴールキーパーは敗北の責任を負うことは多くあっても、勝利のヒーローになることは少ない。そんななところも共通点であると感じます。
(2)点を取ることができない
ゴールキーパーは余程のケースを除いて、ゴールを決めることができません。これも管理職(マネージャー)に共通する事です。
管理職(マネージャー)は部下に指示を出し、実際に行動するのは部下です。上司としてフォローすることができても実際に攻めあがることはできません。いや、攻めあがることはできるとしても、ゴールキーパーというポジションががら空きになるのです。そうすれば現場は混乱に陥ってしまいます。ゴールキーパーは最後尾に位置し、常に全体を見なくてはなりません。そういった部分も共通点です。
(3)精神的支柱
絶対に失点しないということはサッカーをしている限りあり得ません。いつかは必ず失点してしまいます。しかし、ゴールキーパーに求められるのは、失点した後の態度なのです。
失点したあと、責任を感じて落ち込んでいたらチームはどうなるのでしょうか。どんどん雰囲気は悪くなり、モチベーションも下がり、さらに失点を許してしまうことになるでしょう。ゴールキーパーには気持ちの切り替えが求められるのです。
常に前を見て勝利を信じ、チームを鼓舞する。決して最後まであきらめない。何点取られても最後まで必死に声をかけゴールを守る。そういった態度がゴールキーパーには求められます。
管理職(マネージャー)も同様です。最後まであきらめてはいけません。熱く周りに声をかけながら、心は常に冷静に勝利への糸口を探し続ける…。そういった姿勢に、部下たちはきっと勇気づけられるのでしょう。
2.ゴールキーパーが教えてくれた考え方
さて、管理職(マネージャー)とゴールキーパーの共通点をいくつかあげました。役割が似ているということは、考え方も共通するもの多くあります。これからは、私がマネジメントを行う上で実際に大切にしている考え方を記載します。
(1)ゴールキーパーは全体を見る
ゴールキーパーというポジションは、最後尾に位置します。そのため、チーム内の全員の動きを見ることができます。ゴールキーパーは常に声を出し、指示を出し続けなくてはなりません。
ポジショニングがおかしいようなら指示を出し、修正しなくてはなりません。マークがついていない敵選手がいれば、マークについてもらわなくてはなりません。逆に、相手選手の守備にほころびができれば、そこから攻め込むように指示を出します。つまり、常に全体の状況を把握し指示を出し勝利を目指すのです。
良いプレイがあれば褒め、ミスがあったら声をかけ切り替えを促します。自分の『ゴールを守る』というプレイがありながら、全体を見なくてはならないのです。
自分の事で頭がいっぱいになってはいけません。常に冷静でいなければならないのです。いや、冷静さを失った時点で勝利が遠のくのです。
『どんな時でも冷静に』。常に冷静にどうやったら勝てるかを考え続けなくてはなりません。これはマネジメントを行う上で大切な考え方です。
(2)ゴールキーパーは目立たなくていい
ゴールキーパーが目立つということは、チームが押されているということ。つまり、ピンチのとき。チームにとってピンチなど無い方がいいに決まっています。そのため、ピンチを未然に防ぐことが重要になるのです。
ポジションのずれはないか。攻め方が一辺倒になっていないか。ゴールキーパーはフィールドプレイヤーに指示を出し、ピンチにならない様努めるのです。
私の学生時代あこがれたゴールキーパーはこんな言葉を残しています。『ユニフォームの汚れないゴールキーパーが良いゴールキーパー』。ピンチを未然に防ぎ、自らも状況を把握し常に正しいポジショニングを取る。そうする事で失点を未然に防ぐということ。ゴールキーパーに派手なプレイは必要ないのです。そういった部分でも管理職(マネージャー)と共通します。目立つのは自分ではなく、実際に行動する部下でいいのです。
(3)チームのピンチが活躍のとき
そうはいっても、どうしようもなくピンチを迎えることもあります。そんなときがゴールキーパーの出番です。チームで唯一使える手を使い、ゴールを守るのです。
ビジネスでもたくさんのピンチがあります。逆境で苦しかったり、批判を浴びたり。そんなときこそ管理職(マネージャー)の出番です。
そして冷静にピンチを何事もなかったかのように防ぎ、またチームのメンバーに前を向かせる。良くも悪くもチーム内の雰囲気を左右する重要なポジションなのです。
3.まとめ
いかがでしたでしょうか。以上がゴールキーパーというポジションから学んだマネジメントの考え方です。
中には目立ちたがり屋の上司もいます。そんな上司は、良い結果のときは自ら前に出て注目を浴び成果を自分のものにしたがります。そして上手くいかなかったときは部下のせいにして責任から逃れようとします。そんなことではチームの士気が上がるわけもなく、部下もついていこうとは思いません。
成功はチーム全体で取り組んだ結果。上司は主役である必要はありません。ゴールキーパーのように、重要な役割を持ちながら後ろから全員を支える、そんな存在であればいいと思うのです。